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IWATAI
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IWATAI 解説
Valérie Douniaux氏の評論


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  IWATAI 解説

I W A T A I

阿佐見昭彦

 それは、1999年5月、撮影のために訪れていたモロッコのフェズから帰ると驟然と始まった。この一、二年、何かそういう予兆らしきものが有ったとはいえ、それがこのようなことを志向しているという確信など到底あるはずもなかった。長年、忙しい建築の仕事の合間を縫うようにして続けた多くの旅を通して、私のライフワークでもある 《YUKIZURI》 の写真撮影と発表を行ってきていたのだが、今回あろうことか、新たに彫刻までもが加わってしまった。
 さっそく、8キロの油土に3本のヘラを手に入れたが、結局、直ぐ使えそうな道具は何も無く、実際に動かせたものは10本の自分の指だけだった。初めはたった一枚のスケッチも描かず、もちろん、構想などというものも無く、ただ黙々と土を触るだけの日々だったが、一年ほどする内に微かな感触があり、“意外な存在” という視点で創作したいと考えるようになった。
 もしそうだとすれば、自分が生み出した彫刻達との初の出会いは、その明くる年、2000年の初夏のこと、オーストリーの建築家、ハンス・ホラインにヴェニス・建築ヴィエンナーレに招待され、そのレセプションに顔を出し、顔見知った友人達と親交を暖めあったことによる非日常的な高揚心が、帰国した後も持続している間に実現したことになる。
 デビューに先立ち、それは、具象的でも抽象的でもないもの、西洋的でも東洋的でもないもの、実でも虚でもないものなど、対立する概念に拘わるものを基本とし、スケール感を規定しないことや、建築家として三十数年間研鑚してきたささやかな感覚や価値観などが、爽やかな微風ほどに表出してくれれば良いなどと極めて漠然と考えていた。
 《IWATAI》はそれらの経過であり、ある試行錯誤の一つの結果でもある。複数の独立した対位概念を同時に組み合わせることにより生ずる、印象としての “意外さ” や、透明感のある “いわかん” に惹かれたのである。
 建築を通じ、写真を通じ、いや、捕らえどころの無い茫漠たる日常を通じて、私にとってこの世でもっとも興味ある対象とは、広い世界のどこででもお目にかかれるような多くの人間であることから、有機的なるもののメタファーとして人間(頭部・顔)を選び、それを、人類が造り出した幾何の持つ秩序の力によって無機的な記号の領域へメタモルフォーズさせようと目論んだのだが、今回それがどのように成し遂げられたのかは判断不能であるし、またそれが、今後どのように変わっていくのか予想することは困難である。
(2004/07/07)

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